●15:ゆびさき●

もう暗くなってしまった道を2人で歩く。
秋も終わりに差し掛かり、吐く息は白い。
渋沢は思った以上の寒さにかすかに体を振るわせた。


キーパーグローブを買いについてきてはくれないか、と不破から言われた。
渋沢はもともとの性格から、それを断れるはずもなく。
密かに一目置いている相手―不破が自分を頼ってきてくれた、そのことが妙に嬉しかった。


「すまなかったな…つき合わせてしまって…」
と、この場合は礼を言うべきなのだろうが、不破は謝罪の言葉を述べる。
「いや、楽しかったし、気にしないで」
そんな不破に、ニコリと渋沢は微笑み返す。その言葉に嘘はない。


午前中にスポーツ用品店に行き、グローブを買ったあとそのまま昼食を一緒にとり、なんとなく別れがたかったから午後も一緒に過ごした。
不破はあまり外で遊んだことがないのか、どこへ行っても興味を持ち
『これはなんだ』や『何故ここに置いてあるのか』とか、思ったことを容赦なく渋沢にぶつけていた。
その疑問に対して一つ一つ丁寧に渋沢は答えた。


そんな渋沢に、不破は少し驚いた顔をすると
「…お前は優しいな」
と薄く微笑んだ、気がした。
 
「え…」
初めて見た不破の柔らかい表情にドキリとした。
いつもは冷たい視線で。だけど『優しい』と言ってもらえた。

「そ、そんなことないよ」
しばらくボーっとしていたが、ハッとしてあわてて首を横に振り否定する。

「そうか?」
「そうだよ」
「そうか…」
そんなやり取りにプッと噴出して笑った。
楽しい。
ただ純粋に、楽しい。


●●●


「…ここでお別れだね」
こくりと不破が頷く。不破の家と寮との分かれ道である。
送っていこうかとも思ったが、さすがにやめた。

「じゃ、気をつけてね」
と渋沢は別れを告げるが、不破からは返事がなく。
じっと渋沢を見つめている。
「不破君?」
どうしたの?と問いかけると不破は口を開いた。
「風祭が…こういうときはきちんと言葉にするべきだといっていた。俺はどうも言葉にするというのが苦手なのだが…しかし今なら言える気がする」
「?」
とつぜん意味のわからないことを言うので首をかしげると、


「渋沢、今日はありがとう。楽しかったぞ」


ドクン、と渋沢の心臓は大きく跳ねた気がした。
ではな、と背を向けて歩き出した不破の手を、気づいたときには思わず引き止めていた。
なにか言葉を発しようとした、瞬間、ゾクリとした感覚が背中を駆け上がる。

…冷たい。

不破の手は恐ろしいほど冷たかった。
「…渋沢?」

どうしてこんなにも冷たいのだろう。
さっきはあんなに暖かくて柔らかい雰囲気だったのに。
どうして彼の手はこんなにも冷え切っているのだろう。

ぎゅっと不破の右手を両手で包み込んだ。
少しでも、この手が温まればいいと思う。
この手を温めてあげたい、そう思った。

それはまるで祈るかのように、渋沢は不破の手を強く握った。



「しぶ…
「不破君、もうすぐ冬だね」
少しだけ困ったような顔をして、何か言おうとしていた不破の言葉を遮り、空を見上げる。
不破は再度口を開きかけたが、同じように空を見上げ
「…そうだな」
と言った。もちろん右手は渋沢に繋がれたまま。
渋沢の体温が伝わって少しづつ、しかし確実に不破の手は温まっていく。


「…ありがとう」


不破は小さく呟いた。
雲ひとつない空には星がいくつも輝いていた。



END


お題第2号
渋沢が不破君を恋愛対象として意識した時のお話。
この時の不破君は渋沢をすでに好きになりつつあります。
ただ、その気持ちがなんなのかわかってないだけなのです。

しかしなんだろう、この無理やりな終わらせ方は…;というか何が言いたいのか意味がわからない…もっと精進せねば!!

2004.11.15

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